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【山一破たんが原点】
毎年11月になると思い出すのは1997年の山一證券の経営破たんです。この出来事は自分の人生に少なからぬ影響を与えました。妻が勤めていた山一證券が不正会計問題から自主廃業に追い込まれたのは、奇しくも会社創立から100年の節目の年です。勤労感謝の日の振替休日の朝、自主廃業が報道されたときは八ヶ岳にいて、予定を切り上げて東京に戻りました。このときからぼくの企業への不信感と少しリスキーな人生観は芽生えたと思います。妻とはつまらないことでよく喧嘩をします。しかし、不思議と自分が転職をしたり、会社を辞めたり、旅館を買ったりと無謀なことをするとき妻は反対をしません。娘が中高一貫校の中学3年の夏休みを前に、突然区立中学校に転校したいと言い出したときも我が家では誰も反対をしませんでした。それぞれが好き勝手に生きていると家族は似てくるのかもしれません。 -
【一期一会の働き方】
一期一会という言葉はどこか堅苦しく、実態の伴わない精神論を説くようであまり好きではありませんでした。しかし、今の自分の仕事観は一期一会です。旅館の営業を止めている現在はプロジェクト単位の業務受託と非常勤講師の非正規雇用で収入を得ていて、将来への保証はありません。日本では非正規雇用が問題視されますが、欧米の労働力人口の約3割が個別契約に基づくIndependent Contractorとされ、日本でも束縛の多い正規雇用を嫌う一定層が存在します。互いに緊張感のある関係は悪くないと思います。いつでも関係を解消できるからこそ目の前の仕事に集中でき、逃げ場のないストレスにさらされることもありません。期限の定めのない雇用は、やがて緊張感が薄れ仕事は惰性になり、仕事以外のことに目が行き、そして人生も惰性になりがちです。非正規雇用の問題を抱える日本ですが、他方で正規雇用が幸せな生き方とも思えないのです。正規か非正規か、雇用されるかされないかに関わらず、重要なのは仕事への姿勢だけでしょう。 -
【書き換えられる未来】
今朝は阿蘇に来ています。早朝露天風呂に入ると、秋らしく澄んだ星空から、空が青みを増すに従い星が消え、世界最大級の巨大カルデラの山塊が姿を見せます。大自然を肌で感じる場所に身を置くと、日常の些細なことなどどうでもよくなります。以前は、本気になりたいのに動機付けることができない自分にもどかしさを感じ悩みました。悪いのは自分なのか、会社なのか、世の中なのか、人生はなぜこうも束縛ばかりが多いのかを考えました。自分を高揚させられない人生なんて生きる価値がないという強迫観念がありました。つまるところ、人生を人任せにしてきたのだと思います。いつでも未来は書き換えることができると気づいた時から人生は明るいものになります。強制収容所のような過酷な環境で絶望することなく生きる気力を失わなかった人々の心の拠りどころは、人生の主体性を最後まで信じていたことだと思うのです。 -
【授業は予測不能な小旅行】
母校の中学校では夏休みに槍ヶ岳に登らせます。表銀座縦走ルートながら、登山経験のない中学生の団体を登らせるには危険が伴います。実際ぼくが参加した年も複数の生徒が滑落しています。娘の通う高校では1年生全員を一人ひとり違う海外の学校に一年間留学させます。今の教育に必要なのは自身の限界に出会う冒険だと思います。普通の授業なんてしたくありません。授業を予測不能で刺激的な小旅行に変える方法はないものかと、普通の授業をしながら考えます。教員は学生の無気力を嘆きますが、一方でそうさせたのはつまらない授業です。関係者を議論の場に引きずり出さなければ、皆が共犯関係にある教育が抱える問題は改善されません。社会や学校を変えることができるのは対立や反発を怖れず挑める人だと思います。学生にとってはいい迷惑でしょうけど、今の状態で学生を社会に送り出すことを割り切る気持ちにはなれません。勉強のおもしろさに気づくのは大人になってからなのかもしれません。 -
【スーツを着たジョブス】
スティーブ・ジョブスは日本の工場で見た工員の作業服に感激して以来同じ服を着るようになったとされます。スーツを着たスティーブ・ジョブスを想像できないように、スーツ姿の自分をイメージするのが難しくなりました。服は自分らしさを演じる要素ですが、服にはこだわりがありません。いつも同じものを着ることが自分らしさです。服に限らず物へのこだわりもありません。IBM以来20年使っているシンクパッドやグリップ性能で選ぶトレイルシューズ以外のブランドはさして重要ではありません。車は好きですが執着を増やすだけのいい車に乗るつもりはありません。定期点検以外のメンテナンスをしないのに、一切文句も言わず4年で9万キロ近くを走る最低価格のフィアットに愛おしさを感じます。賢者の多くが語るように、執着を手放せば幸せに近づくと思います。
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