新甲子温泉 甲子高原フジヤホテル(しんかしおんせん かしこうげん ふじやほてる)(福島県)

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  • 【政治より理性】
    昨日は大手町、日本橋に行きました。行く頻度が減ったせいか景色が新鮮です。再開発の進む街並みを見ていると景気低迷の実感はありません。他方で、消費増税に歓迎を表明する経済界、野党をはじめ誰も異議申し立てをしないことは不気味です。再々延期の可能性を残すものの、増税を促す国や学者、マスコミの権威などあてになりません。票や利権、大企業のエゴが見え隠れし、国の行く末を左右する重要政策のビジョンが示されることはありません。10%では足りないことは誰もが知っています。年々縮む世帯消費支出に見られるように国民は一層の生活防衛に入ります。問題を先送りし国が傾いてもなお目先の利益を漁るこの国に必要なのは政治ではなく、欲をコントロールする理性だと思います。

  • 【安住の地を捨てる】
    留学場所を移動する娘から週末に荷物と手紙が届きました。ニュージーランドの素晴らしさは宅配便の箱に至るまであらゆるデザインのモチーフが統一されるビジュアル・アイデンティティの一貫性です。国章から幻となった新国旗、オールブラックスのエンブレム、エアラインの機体からあらゆるものが大木に成長する木生シダのシルバー・ファーンやマオリ族伝統のデザインをモチーフにしています。五感の大半を支配する視覚情報として国のブランド価値を可視化するのは、小国ゆえの存在感を高める方法なのかもしれません。引越しのさなかに書かれた短い手紙からは日本を発つ前には想像ができないこの8ヶ月の成長が分かります。昨年暮から3ヶ月我が家にホームステイしていたオーストラリアからの留学生といい、多感な時期の10代半ばの成長には目を見張るものがあります。それに比べれば個人事業者になりこの2年で変わったと騒いでいる自分の成長など物の比ではありません。心地よい安住の地を捨て、厳しい環境で未来を切り開こうと必死にあがくことで、人は初めて成長できると思います。幸か不幸か今の日本社会はその逆を目指しているように見えます。

  • 【美しく衰退する桃源郷】
    昨日は甲子高原にいました。自然の懐に戻るとこの場所こそが自分の定位置だと思います。公害をはじめ多くの社会問題に直面しながら、社会人になる頃までは日本に生まれた幸福に感謝をしました。世界第三位の経済大国である今の日本を誇らしく思う機会は少なくなりました。少なからぬ国民が自信を失いときに自虐的になる理由は、国の将来への不透明感だと思います。ジャパン・アズ・ナンバーワンとまで言われた日本は、課題先進国のトップランナーです。ペリー来航以来165年、常に誰かの背中を追って経済成長の先にあるユートピアを目指してきた日本にとって、理想郷はもはや幻想であり、その地を目指す気概も能力も失いました。開催まで2年を切ったオリンピックに一縷の望みを託す向きもありますが、多くはその後に訪れるであろう不況を怖れます。不足のなかに心の充足を見出す「わび」の美意識を持つ日本が世界に問うべきは、美しく衰退する桃源郷だと思います。

  • 【すりかえられた理想の暮らし】
    昨日は紅葉シーズンの安達太良山に登りました。先月の安達太良山トレイルレース以来の山行で、すっかり体内の空気が入れ替わり頭も身体もリフレッシュしました。人類の長い歴史の舞台であった自然こそが人体のデフォルトです。55kmのレースの絶景ポイントだけを回る3分の1ほどの距離ながら、ハイキングとしてはそれでもハードです。麓からゴンドラで押し寄せた大量の行楽客が登山道を塞ぎ大渋滞で動きません。金で全てが手に入る都市の論理を安易に持ち込み、自然のリスクを軽視する姿勢は危険です。成長至上主義の必要悪だったはずの都市の生活が、いつしか理想の暮らしにすりかえられたと思います。

  • 【生き残るための革新性】
    後期が始まり学生と話す機会が増えると、彼ら彼女らの就職先である企業に思考が向きます。以前と考えが変わり今の自分は就職活動ではなく起業を勧めます。よい会社に勤めるという経済成長期に適合した発想を奨励することはむしろ無責任だと思います。中小企業の新卒の過半数が3年以内に退職する時代ですから、一社に生活の糧を依存して怯えるように暮らすのではなく、自分の力で仕事を創りだす道があることを伝えます。結果として大半の学生が就職するにしても、アントレプレナーの視点を持ち合わせればその職場で成長できる確率が上がります。人類進化とともに長年かけて組み込まれた遺伝子情報は、生存のための保守性と、環境変化を生き残るための革新性という矛盾したメッセージを内包しています。現代の社会で必要なのは後者だと思うのです。

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